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デフォルメされた生き物たちと奏でる、新田恵理の優しい物語。「聴く美術館 #11」

福祉実験カンパニー・ヘラルボニーの契約アーティストにフォーカスするポッドキャスト「HERALBONY TONE FROM MUSEUM〜聴く美術館〜」。

俳優・映像作家・文筆家として活躍する小川紗良さんと、ヘラルボニーの代表取締役社長の松田崇弥(たかや)が聞き手となり、アートに耳を澄ませながら、作品の先に見えるひとりの”異彩作家”の人柄や、これまでの人生に触れていきます。

今回ご紹介するアーティストは、アトリエブラヴォ(福岡県)在籍の新田恵理さん。

独自の解釈でデフォルメされた生き物たちは、新田さんの穏やかな人柄がそのまま表現されたようにどこか穏やかな印象を与えてくれます。

# おしゃれになりたい

小川:今日ご登場いただくのはどんな魅力あるアーティストなんでしょうか?

崇弥:本日はですね、福岡のアトリエブラヴォという福祉施設のアーティスト集団がありまして、そちらから新田恵理さんという作家さんにお越しいただいております。

小川:今手元に新田恵理さんの描いた絵があるんですけど、これは大きなひまわりかな? 綺麗な黄色と青のコントラストの絵ですごく素敵なんですけど。

「帰り道の噴水と藤棚の木洩れ日とカラー、ガーベラ、ミスカンサス」Eri Nitta

崇弥:そうなんです。ガーベラとかミスカンサスとか書いてあって。おそらくお花なのかなと。ぜひ「新田恵理 ヘラルボニー」で検索いただくと、カードのデザインなどが出てくるかと思いますので、ぜひ検索しながらお楽しみいただけたら嬉しいなと思います。

小川:ということで、早速お話を伺っていきたいと思います。今日はリモートで新田恵理さんと福岡県のアトリエブラヴォ施設担当者の古米有香さんにつながっています。

新田さん:よろしくお願いします。

古米さん:よろしくお願いします。

崇弥:お花を描くのが好きなんですか? 新田さんは。

新田さん:お花の絵を描くのが好きでした。

小川:いつもいろんな絵を描いていろんな花を描いてるんですか?

新田さん:描いてます。

小川:アトリエブラヴォという施設はどんなところなんですか? 古米さん。

古米さん:障害者就労支援B型の施設で、障害を持った方が、アートをお仕事に活動している福祉事業所ですね。

小川:じゃあここで新田さんは絵を描くことを仕事にして、いつも過ごしてるんですね。

新田さん:そうです。

崇弥:最近はラーメンの丼にも作品が採用されたってね。

小川:これも写真があるんですけどめちゃくちゃかわいい!

崇弥:これ、飲み干すと、アートが出てくるかと思いきや、もう最初から新田さんの絵が見えますね。ラーメン、食べに行きましたか? 新田さん。

新田さん:食べにいきました。

崇弥:ああ、それは良かった!

小川:博多 一幸舎さんで食べられるんですね。このどんぶりで。

崇弥:今も食べられるんですか?

古米さん:これは子供用どんぶりで、限定の店舗で買うことができます。

小川:買うこともできるんですね! 子ども用のどんぶりだけど、大人のお茶碗としても使えそうなサイズ感。

古米さん:ネットでも販売しています。

小川:ネットでも買えるんだ!いいなぁ。めちゃくちゃかわいいですね。そんな新田さんなんですけど、何歳ぐらいから絵を描いてたんですか?

新田さん:小さい頃から、描いていました。

小川:へえ。小さい頃はどんな絵を描いてたんですか?

古米さん:どんな絵ですかね? 覚えてますか? 鳥とか文字とか?

新田さん:覚えてないです。

崇弥:ふふ。いろいろ描いたんでしょうねぇ。

小川:アトリエブラヴォにはいつから?

古米さん:高校卒業後の2012年4月から所属されています。

小川:なるほど。所属されてから、新田さんの姿を見ていて、絵が変わっていったりとかもしたんですか?

古米さん:そうですね。やっぱり見るもの、触れるもので、どんどん変わっていっている様子は感じられますね。ここ4年くらいは、実は「おしゃれになりたい」っていう思いを持っていらして。

小川:素敵!

古米さん:ね。それでいろいろ提案してみたんです。それまで動物図鑑とかを見ていたんですけど、やっぱり、ポップでかわいい感じ、今どきの女の子が好き、女性が好きそうな感性を、作品に描かれるようになったり。

崇弥:そうなんだ。新田さんご自身も、お洋服を買ったりとかそういうことにも興味があったりするんですか?

古米さん:長いスカート履いて出勤されることもありましたね。

新田さん:長いスカートを履いて、出勤したことがありました。

小川:素敵。

崇弥:いいですね。新田さんの作品とかでね、ヘラルボニーとかでもスカートを作れたら素敵だなと思いました。

小川:確かによさそうですね。ヘラルボニーでは新田さんの作品はどんなプロダクトになっているんですか?

崇弥:実は「ヘラルボニーカード」というクレジットカードがありまして。そちらの券面のデザインとして、新田さんの作品を使用させていただいています。本当に素敵なクレジットカードなので、アトリエブラヴォの職員の皆さんの中でも作られた方とかいらっしゃったりしますかね? いないかな?

古米さん:申し訳ありません…(笑)

崇弥:無料なのでぜひ作ってみてください!

小川:このカードは使った金額の0.1%が福祉業界に還元されるそうですね?

崇弥:そうなんです。先日もちょうど丸井グループの人とイベントで登壇して面白かったのですが、「ヘラルボニーカード」の利用額って普通のエポスカードと比べて4倍なんだそうです。つまり「このクレジットカードで支払いたい」という額が、普通のエポスカードに比べて4倍多いという。さらに普通のエポスカードと比べて若い方が加入されているそうなんです。

小川:そうなんですか。

崇弥:素敵な新田さんの絵にも支えていただいて、未来へ目を向けたカードになっていております。

小川:この模様のカードをお会計で出したら、素敵って思っちゃいますよね。

崇弥:カフェのレジで出して「カードかわいいですね」みたいなところで会話がスタートしたりとかするといいなと思っています。

#踊りたい

小川:新田さんは、この絵を何を使って描いているんですか?

新田さん:アクリル絵の具と、色鉛筆を使いました。

崇弥:何か見ながら描いてるのかな。新田さん。

新田さん:写真を見ながら描きました。

小川:その写真は、施設に置いてあるものを選ぶんですか?

古米さん:ネットからですかね?

崇弥:そっかそっか。

古米さん:ネットで検索するか、アトリエにたくさん本があって、1ヶ月に1回くらい本を20冊くらい借りに行ってるので、その中から選んだりされています。ただ、恵理さんは今までたくさん作品を描かれてるので、写真をぱっと見てもそのときの状況を思い出せないかもしれません。

小川:あぁ、そうですよね! いつもどれぐらいのペースで描かれているんですか?

古米さん:どうですかね? 3ヶ月に10作ぐらいは。

小川:すごいですね!

崇弥:すごいね。

古米さん:4ヶ月で15作ぐらい描かれますね。

小川:それは多いですね。3ヶ月15作ってことは1ヶ月に5作ぐらい描かれているってことですよね?

崇弥:週に1枚は最低でも仕上げていらっしゃるという。

小川:アトリエブラヴォにいるときは、もうずっと絵を描いてるっていう感じですか。

新田さん:そうですね。

小川:新田さんは絵を描いていて、どんなときが楽しいですか?

新田さん:形を描くことです。

小川:写真を見て形を作っていくところですね。

崇弥:例えばアトリエブラヴォで「これ好きだな」っていうこととか、ありますか?  食べ物が美味しいとか。

古米さん:アトリエブラヴォに来て何が楽しいですか?

新田さん:メンバーさんとラジオ体操をするときと、まりな先生の体操と、みんなと仲良く踊るとき?

崇弥:おぉ、いいねぇ!

小川:みんな仲がいいんですね!

崇弥:4年前ぐらいかな? 私も福岡に行かせていただいて、アトリエブラヴォの皆さんと動物園に行って、動物を見ながら作品を描くっていうことをやらせていただいたんです。そのときも最初に体操をされてる方が何名かいらっしゃったのが印象に残っていますね。

小川:絵を描くだけじゃなくて、みんなで体を動かす時間も結構あるんですか?

古米さん:そうですね、絵を描くだけじゃなく、みんなで歌ったりダンスしたりする時間もありますね。体力維持で。

小川:新田さんのプロフィールの中で「友達の優しい言葉に涙が出たり、イベントで出会った人と手紙のやり取りをしたり」とありますね。そういった言葉を交わしたりとか、手紙のやり取りをしたりとか、そういうのもお好きなんですか?

新田さん:うん。好きです。

崇弥:いいですね。新田さん、お手紙はどんなことを書かるんですか?

古米さん:(新田さんへ向かって)どんなことを手紙に書きますかね? ノートに自分の気持ちを描いて、それを見せてくれますよね。そのノートにはどんな言葉を書きますかね?

新田さん:お仕事を頑張って。笑顔で頑張ります。

小川:お仕事への意気込みを書いたりしてるんだ。

崇弥:新田さんは、誰が一番好きなんですか? アイドルでもいいし、ご家族でもいいし、アトリエブラヴォの仲間たちでもいいし。

古米さん:誰が好きですか?

新田さん:BTS!

古米さん:え、そうなんですか!?

崇弥:BTSが一番に躍り出ましたね!うちの娘もね、BTS大好き。

小川:BTSのどんなところが好きなんですか?

新田さん:踊りが上手なところです。

崇弥:なるほどね〜。

小川:やっぱクオリティがね、高いですからね。あと、新田さんの好きなものに「噛まない犬、噛まない猫」と書いてあって。すごくかわいいなと。犬とか猫とか、動物も好きなんですね。

新田さん:そうです。

小川:噛まないほうがね、いいですよね。

崇弥:噛まれたこと、あるんですか?

新田さん:噛まれたことはないです。

小川:じゃあ、怖いんだ。噛まれないように。

崇弥:大事。

小川:絵を描くこと以外に、新田さんが夢中になってることってありますか?

古米さん:一番ハマってるのはダンスかな。

小川:どんなダンスなんでしょう?

崇弥:BTSかな。違いますか?

新田さん:夜に駆ける、です。

小川:YOASOBIの「夜に駆ける」か! 最近のエンタメもお詳しいんですね。

崇弥:いつか披露してくださいね!

#スカートを作りたい

小川:最近はどんなモチーフの絵を描いてるんですか?

(新田さん、絵を画面越しに見せる)

小川:それは何の絵ですか?

新田さん:3人の女の子とファッションと建物の絵を描きました。

小川:やっぱりちょっと女の子のおしゃれに今興味があるんですね。

崇弥:素敵な絵ですね。

小川:またヘラルボニーカードの絵とは違ったテイストで。この3人の女の子は誰ですか?

新田さん:雑誌のモデルの絵です。

小川:モデルさんを見て描いてるんだ。素敵ですね。どんな雑誌を読むんですか?

新田さん:かっこいい、美容室からもらってきた写真。

小川:そうだったんだ。そこからアートに繋がっていくって面白い。

崇弥:新田さんは今、ファッションとかいろんなものに興味あると思うんですけど、今一番欲しいものって何ですか? 何が欲しいですか、今。手に入れられるんだとしたら.

新田さん:シール?

古米さん:シールなんだ!

崇弥:J-WAVEさんでステッカーやってくださいと伝えましょう。ラジオといえばステッカーだから

小川:やりましょう。コラボして。 何のシールが欲しいんですか?

新田さん:動物のシール。

小川:動物のシール。いいですね。

古米さん:お給料で買いに行きましょう。

崇弥:それもいいよね。

小川:ご自身で描いた動物の絵をシールにしてもいいですよね。これから描いてみたいとか、ヘラルボニーでやってみたいこととか、あったりしますか?

古米さん:これからどんな絵を描きたいですか?

新田さん:動物の絵を描きたいです。

「フラミンゴ」Eri Nitta

小川:素敵だろうな。

崇弥:ちなみに、今回クレジットカードを一緒にやらせていただきましたけど、他にこういう仕事をやりたいというものがあれば、お聞きしてもいいですか?

小川:新田さんの絵が、どんなものになったら嬉しいですか。今はクレジットカード。次はどんなもの?

古米さん:恵理さんの絵がどんなものになったら嬉しいですか?

新田さん:スカートを作ってください。

小川:そしたら恵理さんも履けるし、ファッション誌に出てくる可能性もありますね!

崇弥:ちょうどラジオブースの奥にいるヘラルボニーのプロダクト担当の中塚という者もね、今うなずいてたかなと思うんで、具体的にね、お話できたらいいですね。そしたらぜひ毎日はいてくださいね!

新田さん:はきます。

小川:今現在、新田さんの作品をヘラルボニーで楽しめるのは、クレジットカードっていうことなんですけど、これからまたいろいろ計画があったりするんですか?

崇弥:実は現在ですね、表参道エリアに約50台ぐらいですね。IoTで全て分別してくれるゴミ箱を新田さんの作品が美しく彩ってくれています。形もかっこいいので、ぜひ東京近郊にお住まいの方は見てみてください。

小川:すごいですね!新田さんとお話させていただいて、その落ち着いたトーンに心が浄化される感じがしたんですけど、そんな新田さんのアートが実際に町も浄化していくっていう。

崇弥:そうなんですよ。ぜひ東京に、新田さんも見に来てください。

新田さん:見てみたいです。

崇弥:あとはすごいビッグプロジェクトがあって。まだお伝えできないんですけれども。ものすごい場所にも新田さんの作品が出てくる予定もあったりしますので、ぜひ楽しみにご注目いただけたら嬉しいなと思います。

小川:楽しみですね。それから普段使いできるアイテムとかスカートとかも、開発していけるかもしれないっていうことで、楽しみにしてます。ということで、今日は新田恵理さんとアトリエブラヴォの施設担当者・古米有香さん、素敵なお話ありがとうございました。

古米さん・新田さん:ありがとうございました!

text 赤坂智世

 

新田 恵理  Eri Nitta

JOY俱楽部 アート部門 アトリエブラヴォ(福岡県福岡市)在籍。
1991年生まれ(通所開始2012年4月) 昔からノートに文字や絵を沢山描いていた。小さな生き物を描くのが楽しいという。新田フォルムにデフォルメされた生き物たちが画面に静かに現れ、だんだん数が増えていくにつれてつぶやきだし、色鉛筆や水彩絵の具が入ると綺麗な鳴き声を奏でる。物語が始まる予感だ。友人たちの優しい言葉に涙が出たり、イベントで出会った人と手紙のやりとりをしたり、世界が広がる日々。

 

「HERALBONY TONE FROM MUSEUM〜聴く美術館〜」は無料で配信中

 

「アートから想像する異彩作家のヒストリー」をコンセプトに、アートに耳を澄ませながら、作品の先に見えるひとりの”異彩作家”の人柄やこれまでの人生に触れる番組です。

役者・映像作家・文筆家として活躍する小川紗良さんと、ヘラルボニーの代表取締役社長の松田崇弥の2名がMCを担当。毎回、ひとりのヘラルボニー契約作家にフィーチャーし、知的障害のある作家とそのご家族や福祉施設の担当者をゲストにお迎えしています。

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